私は4歳の男の子と2歳の女の子を育てている母親です。
ふたりが通う保育園では、秋になると定番の歌「むしのこえ」をよく歌ってきます。「あ、今日も歌ってきたな」とわかるくらい、家でもご機嫌で口ずさんでいるんですよね。
ある夜のことです。我が家は川の近くにあり、秋になると窓の外からリンリンと虫の声が響いてきます。すると息子が耳をすませながら、「虫さんの声が聞こえるね。チンチロチンチロって言ってるね!」とうれしそうに教えてくれました。娘はその隣で、「おーい、むしさーん、あそびましょー!」と、歌詞そのままに呼びかけていました。
保育園で歌った「むしのこえ」と、実際の虫の音が子どもの中でつながった瞬間だったのだと思います。歌の世界が、ちゃんと現実の世界につながっていると気づいた顔は、本当にキラキラしていました。
同じようなことが「お月さまの歌」でも起きました。保育園で月の歌を歌うようになってからは、夜になると「今日はどんなお月さまかな?」と、親子で空を見上げるのが習慣になりました。
「今日はまんまるおつきさまだね」「今日は横向いてるね」「うさぎさん見えるよ」など、息子と娘はそれぞれの言葉で月を見つけては教えてくれます。
絵本や歌で見聞きしたものを、実際の世界の中で「これだ!」と見つけられたときの表情って、特別ですよね。
虫の声、月の形、雲の動き、川の音…。そうした小さな“発見”をするたびに、ふたりは本当にうれしそうに報告してくれますし、その姿を見ている私の方が、逆にいろいろなことを思い出させてもらっている気がします。
今はスマホやタブレット、動画配信サービスを開けば、きれいな映像や情報が次々と流れてきます。
便利な反面、画面の中ばかりを見ていて、ふとした季節の変化や身近な自然に目を向ける機会が、大人も子どもも減っていないでしょうか。
私自身も、子どもたちが「虫の声がする!」「今日のお月さまはね…」と教えてくれるまで、夜の静かな音や空の表情をじっくり味わうことがほとんどありませんでした。
歌や絵本をきっかけに、現実の世界からたくさんの“気づき”を見つけてくる子どもたち。
その姿を間近で見ていると、「感じる力」や「おもしろがる力」は、こちらが教えるものではなく、一緒に育ててもらうものなのかもしれないと感じています。
これからも、スマホの画面だけに頼りすぎず、虫の声を一緒に聴いたり、月を探したり、風のにおいを感じたり――そんな時間を、できるだけたくさん子どもたちと共有していきたいと思っています。
その一つひとつが、きっと子どもたちの感性を豊かにしてくれるはずですし、同時に私自身の心も柔らかくしてくれるのではないでしょうか。